学芸員のひとりごと

人生の縮図ー山﨑修二「崖と海」-

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安来市加納美術館で3月18日から「洋画家山﨑修二の世界」展が始まった。会場には、デビュー作の「裸婦像」から晩年の「崖と海」までの約50点が並んでいる。

山﨑修二は島根県能義郡大塚村に生まれた。幼い頃から絵を描くのが好きだったが、米子中学校(現米子東高校)4年生の時にフランス帰りの前田寛治に会って、図抜けた画力に衝撃を受ける。これを機に松江洋画研究所に通い始め、翌年夏の夏季洋画絵画講習会で斎藤与里と出会った。

斎藤は、パリ留学中にセザンヌ・ゴッホ・ゴーギャンら後期印象派の作品に魅せられるとともに、作家の感覚を重視したフォーヴィズム(野獣派)の表現に感動した。帰国後はフューザン会や槐樹社の創立に参加する一方、各地の講習会で熱心に指導した。

山﨑が斎藤と出会ったのは1927年の松江洋画研究所の夏季講習会だった。17歳の青年の才能を高く評価した斎藤は、山﨑に画家になるように奨めた。しかし、山﨑は家の事情で躊躇して悩み続ける。そのような時、岡田三郎助のもとで絵を学んで帰郷した加納莞蕾から絵を描く喜びを教わり、絵描きの道を進もうと決意した。

やがて石見で暮らすようになった山﨑は、身の回りの風景や人物を描くようになる。青い空、緑の森、赤瓦の屋根などが描かれた作品は石見の独特の景観を見事に捉えている。学校の教え子や家族などを描いた絵にはモデルへの慈しみがあふれている。

67年、定年1年前に退職した山﨑は、絵画研究のため欧州に旅立った。レンブラント晩年の自画像を見た彼は、その表現力に衝撃を受けた。そして、苦悩の末に「天才は天才の絵を、凡人は凡人の絵を精一杯描けば良い」という答えを導きだした。その後、日展出品も止め、洋行を繰り返しながら心の赴くままに絵を描いた。作品は明るさを増し、色調も多彩になった。

山﨑は、佐藤一章ら先達との出会いを通して技を磨くとともに、謙虚さや誠実さを身につけていった。会場の絵の変遷を見ていると、良き師を次々と訪ねて修行を重ねた善財童子という釈迦の弟子の姿が浮かんでくる。

会場の最後にあるのは「崖と海」という作品だ。57年8月、山光会10周年の講習会に狭心症から回復したばかりの斎藤与里がやってきた。講習会終了後、山崎は齋藤とともに島根の海岸を旅した。それが二人の最後の旅となる。その時の思い出を描き始め、40年かけて完成させた。

早朝の石見の海岸。茜色の空の下に島根半島の山並みが見える。その向こうにはふるさと安来がある。望郷の気持ちと恩師との思い出が交錯してこの絵を描かせたのだろう。随所に見られる細やかな筆跡は、若い頃の斎藤の描き方に似ている。

作品を通して、一人の画家の人生の旅路に想いを馳せていただきたい、そう願いながら会場を廻っている。



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# by zingakugei | 2017-03-27 14:08 | 安来市加納美術館

2017年3月25日 佐々木桜が開花

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お待たせしました。2017年3月25日、佐々木桜が開花しました。
朝方、つぼみが赤くなって大きくふくらんでいましたが、12時頃に10輪ほどが開花しているのを確認しました。
佐々木桜は推定樹齢300~350年のエドヒガンザクラ。石見の一本桜の中で最も早く咲くことで知られていますが、例年より4日遅い開花です。昨年に比べると6日遅いことになります。数日後には大平桜や金谷城谷桜も開花します。

佐々木桜の場所は、三隅インターから1・2分ほど、国道9号線子落交差点のすぐ横です。浜田市立石正美術館に入る三差路を右折したところにありますので、とても分かりやすいです。
石見の一本桜を巡る方は、是非お立ち寄りください。
なお、石正美術館のしだれ桜はつぼみが大きく膨らんでいます。こちらもあと数日で咲くと思われます。
今年、一本桜はそれぞれ花芽が多いとの情報が寄せられています。楽しみがいっぱいです。

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# by zingakugei | 2017-03-25 20:04 | 石見の一本桜

人形作家安部朱美展に寄せて

ある春の日の午後、人形作家安部朱美さんを訪ねて米子市のご自宅に伺いました。玄関を開けると、安部さんがいくつもの塑像とともに出迎えて下さいました。応接間には、数多くの人形とともに陶器やレリーフもありました。「昭和の家族」の人形で有名な安部さんですが、時代を超えた母性愛や家族のいたわりをテーマに多くの作品を生み出してきたことを知りました。
1981年に粘土人形創りを始めた安部さん。それは自らの内面を探る作業であり、時には苦しみもがくこともありました。「もうこれで止めにしよう」と決めて出品した2007年の「京都宝鏡寺門跡人形展50周年記念人形作品公募展」で大賞を受賞。それを見た方が、昭和をテーマにした人形づくりを勧め、2010年に全国巡回展を企画して下さいました。各地で反響を呼んだこの展覧会を通して、家族愛の大切さを伝えたいと思うようになったといいます。
安来市加納美術館は、恒久平和を願い続けた画家加納莞(かん)蕾(らい)(1904~1977年)の思いを伝えるべく、家族連れで楽しんで貰える企画展を夏に実施しています。家族で思いやりや愛、人と人のつながりを考えていただき、平和を身近なものに感じて貰えるようにしたいと願ってのことです。
安部さんの創作姿勢と35年の道程(みちのり)に感激して、展覧会の実施をお願いしました。鎌倉や名古屋での展覧会の準備に追われていたにも関わらず、安部さんは申し入れを快諾して下さいました。そして、展示プランづくりはもちろん、作品搬入や展示作業もご主人と二人でして下さいました。安部さんご夫妻の懸命な姿に心打たれて職員もお手伝いしました。
制作に際して、語り過ぎず、創り過ぎないように心がけているという安部さん。見る人がそれぞれの想いを重ねてくださるようにと願ってのことです。その思いを大切にしたいと思い、パネルや解説は極力減らしました。出来上がった展示室には、安部さんが創り出した人形たちがキラキラ輝いています。人形を飾る様々な細工物も無垢で素朴で美しく、人形とともに優しい和みの世界を創り出しています。
会場の一画には、加納莞蕾が子ども達の幸福を願って記した言葉に向かって手を合わせる老婦人の人形が展示されています。時代や国境を超えた普遍的な愛や哀しみ、人と人の絆を表現したいと願う安部さんと莞蕾の願いが通じ合うものだと語っているようです。
心が通いあう喜びを伝える人形達を家族一緒に鑑賞していただけたら幸いです。
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# by zingakugei | 2016-08-06 15:16 | 安来市加納美術館

大平桜開花(2016年の開花状況)

浜田市三隅町矢原にある大平桜(おおびらざくら)は、3月27日に開花しました。
去年と同じように花芽をうそに食べられて上の方には花がないようです。
見ごろは4月2日・3日の大平桜まつり頃と思われます。
今年も、観光コンシェルジュが大平桜の「物語」をお話しさせていただきます。

大平桜に来られたら、石正美術館のしだれ桜、井川一本桜、金谷城山桜(益田市美都町山本)などもお訪ねください。
《下の写真は昨年の大平桜》
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# by zingakugei | 2016-03-29 22:22 | 石見の一本桜

佐々木の桜開花

2016年3月19日、石見の一本桜のトップをきって佐々木桜が開花しました。
推定樹齢300~350年のエドヒガンザクラです。
石見の一本桜の中で最も早く咲くことで知られていますが、今日開花しました。平均開花日より3日早いです。昨年に較べても2日早い開花です。

佐々木桜の場所は、国道9号線子落交差点のすぐ横です。浜田市立石正美術館に入る三差路を右折したところと言った方が分かりやすいかも。これから大平桜、海老谷桜、井川の一本桜、金谷城谷桜が次々に咲きます。ソメイヨシノとは違う孤高の桜を愉しんでいただけたら幸いです。
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# by zingakugei | 2016-03-19 19:41 | 石見の一本桜

安来で義武を楽しむ会

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安来に住んで11か月経ちました。
この間、ヨシタケコーヒーの講習会で、何度も浜田に通いました。
このほど、普段お世話になっている安来の方々にもヨシタケコーヒーを味わっていただくべく、「安来でヨシタケコーヒーを楽しむ会」を開催することになりました。
この日は、ネルドリップの魁として知られ、世界で初めて缶コーヒーを製造・発売した三浦義武のコーヒーを味わっていただきます。
また、三浦義武の生涯を紹介する紙芝居を上演します。
独特の香りと深い味わいをお楽しみいただくとともに、三浦義武のコーヒーにかけた思いに触れていただければ幸いです。

 日 時 2月28日(日) 午後2時~4時
 場 所 安来市加納美術館 別館レストラン
 参加費 一人500円
 定 員 50名(予約不要、当日先着順で受け付けます
 その他 詳しい内容は安来市加納美術館(0854-36-0880)にお尋ねください。
 
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# by zingakugei | 2016-02-19 11:36 | 三浦義武と缶コーヒー

「山陽の三巨匠春を愉しむ」始まりました

1月11日(月)、今日から企画展「山陽の三巨匠春を愉しむ」が始まりました。
当館には、岡山出身の小野竹喬、池田遙邨、金重陶陽の三巨匠の作品が数多く収蔵されています。
その中から、春の到来を感じさせる作品約90点を選んでみました。

同じ時代に活躍した三人は、真実一路を一歩一歩足元を確かめながら歩み続けた求道者です。かけがえのない人たちと出遇い、それが制作に新たな力を与えました。
展示室に並ぶ作品は、彼らの人生の旅の足跡です。
無事初日を迎えることが出来てほっとしています。
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            小野竹喬「雪晴」
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# by zingakugei | 2016-01-11 20:29 | 安来市加納美術館

コハクチョウの里にナベヅル飛来

e0132674_13335791.jpg暖かい日が続きます。
我が家からほど近い安来市の某所。
多くのコハクチョウが日中えさをついばんでいます。
ある日、その群れの中に見慣れない大型の鳥がいました。
双眼鏡でのぞくとナベヅルでした。

渡りの途中で迷い込んだのでしょうか。
ある川の河口付近をねぐらにして、そこから田んぼに通っているようです。
西日本各地では、デコイをつくってナベヅルに来てもらおうとしていると聞いたことがありますが、まさか安来に降り立つとはと驚いてしまいました。

親や仲間とはぐれ、白鳥の群れと一緒に行動する姿を見て、かわいそうに思いました。
シベリアに帰る時、また仲間に遇えますようにと願いながら、遠くから見守っています。
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# by zingakugei | 2015-12-24 13:34 | 或る日の出来事

白鳥と紅葉

e0132674_1244443.jpg毎日、家から美術館まで約30分かけて出勤しています。
この時期は、白鳥に遇うため、いつもと違うコースを走ります。
安来市赤江の干拓地には、今年、5~6組の白鳥の家族がやってきました。
朝から夕方まで、田んぼで餌を探しています。
飯梨川に沿って山あいの美術館に向かう道から見えるのは、霧のかかる美しい山並み。
水墨画のように見えるときがあります。

美術館のある広瀬町布部は、山中鹿助の闘いの場所として知られています。
そこの真ん中にある要害山は、今紅葉の真っ盛り。

毎朝、石見の景観とは違う景色を楽しんでいます。

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# by zingakugei | 2015-11-24 02:52 | 或る日の出来事

永原雲永の銘品公開

e0132674_10331264.jpg安来市加納美術館では、現在「布志名焼の世界」展を開催しています。
この展示の準備をしている時、「色絵山水図角花入(いろえさんすいずかくはないれ)」という作品に出遇いました。
黄釉に緑・赤などをふんだんに用いて、深山にゆったりと暮らす人物が描かれています。その中に、池大雅の「十便図(釣便図)」と酷似していた図があってびっくり。

花入の作者・永原家6代(陶家3代)永原房則(ふさのり)(1831~1891年)は、幕末から明治にかけて活躍しました。
特に、明治維新後は、工夫を重ねて海外向け洋食器や花瓶など多彩な作品を作り続けました。
この絵柄が誰かの指示によるものか、雲永が自ら考案したものかは定かではありません。
私は、先人の作品を巧みに採り入れつつ、色絵に物語性を持たせ、見る者の想像力を誘い出す手法に感服しました。
これこそが、本質的なものを大切にしながら、新しい変化を求め続けてきた布志名焼の魅力かと思います。
多くの方々に布志名焼の魅力をお伝えしたいと願いながら展示ケースを拭いています。
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# by zingakugei | 2015-11-12 10:40 | 安来市加納美術館



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